睡眠中には脳は休止しているものだと長い間信じられてきました。しかし現代の医学では、睡眠中でも約80%が活動していることがわかっています。
ここでは睡眠の意味、その働きを紹介していきます。
① 精神の安定
一般に脳に取り込まれた栄養は必須アミノ酸としてトリプトファンとアルブミンが結合した状態で存在します。睡眠によってインシュリンが分泌されることでこのふたつが切り離され、トリブトファンはセロトニンに変化し、脳を覚醒させて気分を安定させるのです。同時にセロトニンは夜になると脳を眠らせるためのメラトニンに変わります。
こうして身体と脳を休息させるための活動期と睡眠期のスパイラルが出来上がるのです。
②記憶の定着
人間は昼間に体験したことを記憶として整理しておく必要がありますが、この情報処理を行うのが睡眠中です。
脳には認知機能をつかさどる前頭連合野があり、そこで記憶の定着と消去を行っていきます。学習に使われた神経を休ませて不要な記憶を消して、新たな領域を確保していくのです。
睡眠が充分でないと記憶の定着がうまくいかず、意欲が湧かないことや感情のコントロールができなくなります。睡眠中に脳は次の活動に向かうための情報整理を行うため、睡眠が足りないとこういったコントロールがうまく機能しなくなります。
③ストレスの軽減
睡眠はストレスと大きな関連があります。ストレスで眠れないということはよくある話ですが、実際はその逆で、眠れていないからストレスを感じやすくなっているのが真実であると言われています。
睡眠が足りないと大脳の働きが低下します。
動物の場合、大脳の働きが低下すると捕食される危険性が高まるため、感情をつかさどる部分である扁桃体を活発に働かせて緊張状態にし、周囲の敵を監視するようになっています。
人間の場合もこれと同様のことが起こり、周囲に対して敏感になり、普段なら聞き流せるようなことに反応してしまったり、なんでもないことに落ち込んだりすることになるのです。
この現象の主体は扁桃体の後ろの記憶をつかさどる重要な器官である海馬ですが、体験したマイナスの感情は扁桃体で記憶され、同じような状況になったときに再び警戒するようになります。
これが続くことでストレスがたまっていくというメカニズムです。